
ボストン交響楽団オーボエ奏者 若尾圭介の クラシックな日々 in ボストン
【第2回】
今年もホリディ・シーズンがやって来た!

オーボエの演奏に合わせて子供がダンス
ボストンは今、先週のサンクスギヴィング(感謝祭)と共に口火を切ったホリディシーズン真っ只中。街中や家々にはクリスマスに向けてのデコレーションが灯り、クリスマス商戦は連日ヒートアップ。そして夜な夜な人々が集うパーティシーズンでもあります。オーボエ奏者という職業柄、コンサート後のレセプションに参加することはしょっちゅう。その他にも、ディナーパーティ、カクテルパーティ等、フォーマルからリラックスした雰囲気まで、パーティの形態は様々。まあ、ほとんどの場合、何かにカコつけては皆で集まってワイワイ、カジュアルにというのがアメリカ流ですが。
今回はパーティ続きだった我が家のサンクスギヴィングウィークの様子をお届けします。
サンクスギヴィングも音楽三昧
サンクスギヴィング・デーは毎年11月第4木曜日(今年は11月22日)、アメリカ最古の大きな祝日です。勿論ボストン響のリハーサルもコンサートも全てお休み。

ボストン名物ロブスター
前日、ボストン名物ロブスターを食べにお祭り気分の街に繰り出し、シーフードレストラン《リーガル・シーフード》へ。勝手にサンクスギヴィング前夜祭と称して、大きなロブスターを注文! 蒸したものも良いけどレモンをジュッとひとかけして頂くベイクドも美味。他にもチェリーストーン(アメリカでよく食されているニ枚貝)やムール貝、クラムチャウダーなど、ボストンならではのシーフードを心ゆくまで堪能しました。
さてさて、サンクスギヴィング当日。付き物のローストターキー(七面鳥)をメインディッシュに家族や友人達が集ってご馳走を食べる日、収穫と1年の生活に感謝する日です。
13ポンド(約6キロ)もあるターキーを丸ごとこんがり焼き上げるには、早朝から始めなければ間に合わない(焼き時間だけで約4時間)というのに、前夜ゆっくりしすぎて一家揃って朝寝坊。少々慌てました。
我が家ではボストンへオーボエ留学に来ている学生達とのランチが毎年恒例。ニューヨークでの留学時代の恩師、元ニューヨークフィル首席オーボエ奏者のジョセフ・ロビンソン先生のご家族が毎年必ず、学生達を招待してターキーをたらふく食べさせてくれたことが今でも心に残っていて、我が家でも恒例としているのです。ふるさとに帰るアメリカ人学生は別として、日本や遠隔地から勉強に来ている学生達が我が家のターキーを食べにやってきます。
普通のパーティの始まりは、集まったゲストがカクテル片手に、アペタイザーをつまみつつ暖炉を囲んでゆったり談笑・・・・・・なんでしょうが、我が家では、オーボエ片手にお喋りしたりオーボエトリオが始まったり・・・・・・という具合でメインのターキーが登場するまで音楽三昧でした。
まるまる2日サンクスギヴィングパーティ
夕刻にはご近所の友人、ピーターとクリスティーン夫妻宅へ。ボストンらしいクラシカルな邸宅に彼らの家族と友人達が一堂に会するトラディショナルなサンクスギヴィングパーティーでした。日ごろお世話になっている感謝の気持ちをこめてオーボエの演奏を披露。
その後、もう一軒、ボストンを拠点に日本でも活躍しているボロメオ弦楽四重奏団のメンバー、ニコラスとイーサン夫妻宅へ。

トラディショナルなサンクスギヴィングパーティ
まもなく2歳になる我が娘は、世界的なヴァイオリニストであり指揮者、故シモン・ゴールドベルクの愛弟子であったニコラス・キッチンに人生初のヴァイオリンの手ほどきを受けました・・・・・・。いや、親としては内心、大感激。サンキュー、ニック!
翌日もまた別の友人宅のパーティへ・・・・・・と、ターキー尽しで少々食傷気味とはいえ、今年もたくさんの人と会い、ご馳走を囲んで会話も弾み、楽しく過ごしたサンクスギヴィングでした。
でもいくらクリスマスと並ぶアメリカ最大の祝日だからといって、これだけの人々が右に習えと家々に集い、大勢の家族や友人を招待して過ごす日というのは、今の日本ではみられないのではないでしょうか。特別な日に限らず、アメリカに暮らしていると気軽に人々と集う機会やパーティがことのほか多いような気がします。
《人は人、自分は自分》という考え方がはっきりしている分だけ、ともすると簡単に孤立状態に陥りやすいアメリカ社会。意識的に人との交流を持とうとする現れがアメリカのパーティで、大切なコミュニケーションの場なのでしょうね。
思えば、大勢のお客様の前で演奏をするコンサートも一方通行なものではダメ。コンサートは演奏をしながらも会場の空気や人々の思いを敏感にキャッチするコミュニケーションの場でなければ良いものにはならない、ということを長い間アメリカで音楽活動をしてきて心得るようになりました。そういうわけで、本能的に人とのコミュニケーションが大好きなので、忙しい最中でもパーティやディナーのお誘いにはいそいそと出かけていく私なのです。まあ、そこに用意されているであろう豪勢な食事の魅力も大きいわけなんですけど・・・・・・(つづく)。
マンハッタン音楽院ジョセフ・ロビンソン氏に師事、卒業後同学院で教鞭をとる。マイケル・ティルソン・トーマス率いるニューワールド交響楽団創立の1987年、初代オーボエ奏者として同楽団入団。1990年よりボストン交響楽団準首席奏者及びボストンポップスオーケストラ首席オーボエ奏者を兼任。更にニューイングランド音楽院で教鞭をとる。日本での活動としては88年より“若尾オーボエキャンプ”を毎年行っている。98年クリストフ・エッシェンバッハ氏と共演のデビューCD「カンツォネッタ」をはじめとし、ジョン・ウィリアムス氏等の著名な音楽家とのCDも多数リリースしている。近年では代官山ヒルサイドテラス音楽祭音楽監督、スーパーワールドオーケストラ首席オーボエ奏者など、ソリスト以外にも様々な活動を展開している。
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