
ボストン交響楽団オーボエ奏者 若尾圭介の クラシックな日々 in ボストン
【第17回】
初心に帰って〜若尾圭介オーボエキャンプ
レイ・スティル、ジョン・マック、モーリス・ブールグ、ジョセフ・ロビンソンにR.ゴンバーグ、A.ジョナベース・・・・・・。オーボエに興味の無い方には全く知らない名前の羅列になってしまうかもしれませんが、いま挙げた方たちはいずれも私がオーボエを始めて間もない10代の頃、第一線で活躍していた歴史に残るオーボエ奏者です。そしていずれも私が中学生、または高校生の頃直接お会いした方々でもあります。彼らが演奏旅行で来日した折、バラの花一輪とオーボエを抱えて楽屋へ会いにいったのです。日本に住むオーボエ好きな一少年に過ぎない私が、コネもなければ全く面識の無い世界のオーボエ奏者に会うには、機会を見つけて《自分から会いに行く!》しか方法がありませんでした。周りからは「よく一人で会いに行けるねえ。緊張しない?」とか「そんな失礼なこと、やめなさい」などいろいろなことを言われました。でも、今でも確信しています。その分野の第1人者に直接会うことがどれだけ刺激的で、やる気を焚きつける力になるか。自分の目指すものを現実に成し遂げた人に会うことで、夢を具体的に思い描けるようになり、未来の夢への大きな足掛かりになるのだと。
《ジョン・マック・オーボエキャンプの精神》

オーボエを通して人生を味わい尽くそうじゃないか
そうして出会った、キラ星のごときオーボエ奏者のお一人お一人と、その後の人生において、深く関わっていくことになりましたが、なかでもニューヨーク・フィル首席オーボエ奏者であったジョセフ・ロビンソン先生の演奏には強く魅かれ、教鞭をとっておられたニューヨークの学校への留学を決めました。
公私共に本当にお世話になったロビンソン先生は、今でも私の「アメリカのお父さん」。先生に追いつきたい一心で、先生の着る服まで真似ていたことも懐かしい思い出です。そのロビンソン先生が崇拝するクリーヴランド管弦楽団首席オーボエ奏者であったジョン・マック氏がノースカロライナ州で開催するオーボエキャンプに初めて参加したのは、高校2年生の時。「ジョン・マック・オーボエキャンプ」は当時オーボエを手にする者の間では既に有名で、主に全米、カナダから多くの参加者を集めていました。超一流のオーボエ奏者のキャンプでしたが、参加者のレヴェルは様々。プロ志向の参加者のみならず、ビジネスマンから自営業者まで、中には医者など他に仕事を持ちながらオーボエを続けている大人の参加者も多く、その窓口の広さに驚くと共に、深い共感を覚えました。「オーボエを吹くことが楽しいと思う人なら、どなたでも!」と、時にクラシック音楽全般に付きまとう堅苦しさなど微塵もありませんでした。その自由で風通しの良い精神が忘れられず、日本でもぜひこれを取り入れてみようと1988年、「若尾圭介オーボエキャンプ」を始めました。20周年になる今年も8月末、東京での開催を予定しています。

若尾圭介オーボエキャンプはこんな感じ
《オーボエが好きという気持ちこそ出発点》

オーボエキャンプ初期のころのパンフレット
ジョン・マックの精神に則り、私のオーボエキャンプでもプロを目指す方はもちろんのこと、趣味またはアマチュアや学校のオーケストラで吹いている方々など、オーボエを楽しく学んでいる全ての方を対象にしています。いろいろなレヴェルのオーボエ奏者が集まりますから、個人指導あり、皆で同じフレーズを吹いてみるグループ指導や、マスタークラス形式のレッスンなど指導にも工夫をこらしています。
どんな素晴らしいオーボエ奏者だって、初めてオーボエをやってみようと思うときには「プロになろう」と思って始めるわけではありません。誰にとっても「オーボエっていい音だな、音楽が好きだな」と思うところが出発点。そしてどこまでいっても結局、この気持ちが一番大切なんですね。
皆さんに、オーボエと音楽の魅力をより深くお伝えできるように、そして自分なりの方向性を具体的な形で見つけてもらえるように、私も今準備を進めています。
第17回若尾圭介オーボエキャンプ詳細は
日本ダブルリード株式会社HPへ
http://www.jdri.jp/events/index.html
マンハッタン音楽院ジョセフ・ロビンソン氏に師事、卒業後同学院で教鞭をとる。マイケル・ティルソン・トーマス率いるニューワールド交響楽団創立の1987年、初代オーボエ奏者として同楽団入団。1990年よりボストン交響楽団準首席奏者及びボストンポップスオーケストラ首席オーボエ奏者を兼任。更にニューイングランド音楽院で教鞭をとる。日本での活動としては88年より“若尾オーボエキャンプ”を毎年行っている。98年クリストフ・エッシェンバッハ氏と共演のデビューCD「カンツォネッタ」をはじめとし、ジョン・ウィリアムス氏等の著名な音楽家とのCDも多数リリースしている。近年では代官山ヒルサイドテラス音楽祭音楽監督、スーパーワールドオーケストラ首席オーボエ奏者など、ソリスト以外にも様々な活動を展開している。
http://wkboston.exblog.jp/