(2008年3月18日掲載)
やられました(笑)
いや〜、今週は私の名前が『週刊新潮』の見出しに出てるんですよ。宣伝するわけじゃないですが(笑)、読んでない方のために説明しますと、記事はある番組に関して、書かれたもので、私は制作をしたわけでも取材したわけでもないし、ただ出演しただけ。なのに、その番組だとネタ的に弱いと判断したのか、関係のない私が見出しに利用されてしまいました。天晴れこれぞまさしく週刊誌的手法! でも私も週刊誌の編集長時代散々やってきたことです(笑)。見出しには固有名詞を必ず出せよとよく言ったものでした。
こういう記事が読みたかった
そんな『週刊新潮』ですが、今週号は『【短期集中連載】(第5回) 新・「裁判官」がおかしい! 抗議の「焼身自殺者」まで出た「和解」という名の脅迫』という記事が非常に良かった。いま冤罪事件が相次ぎ、日本の裁判は深刻な状況に陥っています。冤罪というと警察や検察の責任と思われがちですが、実は問題は裁判官にあります。非常に優秀だと言われている裁判官ですが、警察、検察側とくっついて、無実を訴える被告を切り捨てるケースがいかに多いことか。
この記事には、訴訟当事者に脅迫的手法を使って「和解」を強制した裁判官の実例が書かれています。しっかりと取材がされて読みごたえがありました。マスコミがどこもあまり裁判批判をやりたがらない中、せっかく金をかけて週刊誌をやるんだったら、こういう志がある記事を書いて、何が事の本質なのかを伝えて欲しい。世の中を少しでもいい方に引っ張っていくような記事を読みたいと思います。
冤罪を生み出す日本の司法制度
最近、事の本質が抜けおちて、みんな何が大事なのかを見失っていると思います。三浦さんが日本で一度無罪判決が出ているのにも関わらず、サイパンで逮捕されたことに、なぜ日本の法務省は何もコメントを出さないのか?
だいたい法務省は日本の官僚の中で一番救いようがないんですよ。あの悪名高い代用監獄も法務省が元締めになっています。国連から過去3度に亘って人権上問題があると改善勧告を受けているにも関わらず、一向に止めない。代用監獄とは、警察の留置場内に48時間しか留置できないはずの被疑者を、本来その後送るべき拘置所ではなく、警察署の留置場に留置させること。最近改正されて名前が刑事施設法に変わった監獄法の中の、代用監獄を認めている部分を日本の警察は乱用しています。被疑者を留置場に何十日も入れて、朝夜にわたる取調べで肉体的にも精神的に追い詰め、警察の有利になるような調書を取って署名させる。こうした事情を知らない無実の被疑者は、「日本は民主主義だから、裁判の場で本当のことを言えば、裁判官は認めてくれるだろう」と、辛さから逃れるためについやってもいないことに署名してしまう。ところがどっこい裁判の場では裁判官は、「警察官や検事の前で任意で自供しているのに今更やっていないといっても通用しない」と、証拠として採用してしまうのです。これが先進国のやり方でしょうか? アメリカが、日本国内で罪を犯した米軍を中々日本の警察に引き渡さないのは、日米地位協定の問題もありますが、日本の司法制度が非民主的で、人権に配慮していないので身柄を渡せないと思われているからです。
先日福岡で、兄を刺殺して家に火をつけた容疑で逮捕され、1000日以上も留置場に拘留された女性の無罪が確定しました。捜査機関が情報を得るため代用監獄を利用したのは、身柄拘置を犯罪捜査に乱用するもので、捜査手法として相当性を欠くため、犯行告白には証拠能力がないと判決が出ました。しかし、検察側は非を認めず適正な捜査だったと主張しています。ご主人が警察の取調べを苦にして自殺など犠牲はあまりにも大きく、その傷は何を持ってしても埋められないでしょう。
『週刊新潮』がこの特集を始めた動機はわかりませんが、彼らはよく名誉毀損などで訴えられて裁判で負けています。裁判をわが身で経験してみて、裁判官がおかしいことに気がついたのでしょうか。とにかく冤罪事件が多発する今、『週刊新潮』にはこれからも裁判、そして裁判官批判の特集を続けて欲しいと思います。
鳥越俊太郎
/ニュースの職人

1940年福岡県生まれ。京都大学文学部卒。65年、毎日新聞社に入社し社会部記者に。88年『サンデー毎日』編集長。89年、テレビ朝日「ザ・スクープ」のキャスター。2001年、「桶川ストーカー殺人事件」などの報道により、日本記者クラブ賞を受賞。
鳥越さやか
/シンガー・ラジオパーソナリティ・俳優

1972年東京都生まれ。清泉女子大学英文科卒。フランス国立高等演劇院のワダユタカ教授の元で演劇を学び、同教授が率いる『劇団CAT21』に10年在籍。その間もフランス・イタリアに計2年半語学・演劇留学。2004年よりJ−WAVEやTBSラジオでパーソナリティを務める。同年フランス語で歌うシャンソンコンクールで優勝。以来、ライブコンサート、シャンソニエなどで歌手として活躍中。

