Show Creator 小林 香の聞かせてください! 雑誌の履歴書

第9回 ゲスト 乳酸菌ビジネスユニット・ディレクター 杉山喜久雄

03月18日

(2) 大ヒット商品「ラブレ」はこうして生まれた。

大ヒット商品「ラブレ」はこうして生まれた。

小林
そもそも「ラブレ」とはどうやって出来たかをお聞きしたいです。
杉山
小林さんご出身は京都と伺っていますが、すぐきのお漬物ってご存知ですよね。
小林
もちろん、もちろんです。
杉山
じゃあ、上賀茂神社の境内のまん前にある、「すぐきや六郎兵衛」というお漬物屋さんは知っていますか?
小林
ええ、知ってます。
杉山
実は、そこからラブレ菌は発見されたんですよ。
小林
どうやって見つけたんですか?
杉山
見つけたのは岸田綱太郎先生です。京都にあるルイ・パストゥール研究所の理事長だった方です。先生は、京都に長寿の方が多いことに着目されました。伝統的に日々食べているものに、長寿の理由があるんじゃないかと研究を始められ、それが漬物という仮説に至ったのですね。ただ漬物といっても、千枚漬けや柴漬けがあるでしょ。先生は、いろいろなところから漬物をもらって調べられた結果、「すぐきや六郎兵衛」のすぐきからラブレ菌を発見されたのです。
小林
それはすぐきのお漬物には必ず入っているんですか?
杉山
いえ、樽によって違います。たまたま、「すぐきや六郎兵衛」の樽のすぐきにあった。このラブレ菌を電子顕微鏡で見ると、ネバネバがいっぱい付いています。ここに免疫を強くする秘訣があるらしいのです。
小林
じゃあ、六郎兵衛さんの一家はみなさんご長寿で?
杉山
それはちょっと分からないです(笑)。
雑誌ネット
どうしてそのお漬物屋さんの樽の中にだけラブレ菌がいたんでしょう?
杉山
それも分からないんです。おそらく、元々すぐきについていた乳酸菌の内、「すぐきや六郎兵衛」の樽と相性が良かったラブレ菌が、その樽に住み着いたものと考えられます。漬物樽の中の酸っぱくて、塩辛くて寒いという菌にとって苛酷な環境の中で、ラブレ菌が淘汰されずに生き抜いて岸田先生に発見されたのでしょう。
小林
「ラブレ」に使った菌は、このお漬物から最初に取った菌ですか?
杉山
そうです。パストゥール研究所ではそれを大事に増殖、培養してマイナス80度で保存していました。このオリジナルの菌をカゴメの研究所にもらってから、カゴメでもきちっと保管管理しています。
小林
どうして「ラブレ」菌というんですか?
杉山
元はラクトバチルスブレビスという長ったらしい名前ですが、これを短縮化してこう呼んでいます。
小林
でも、岸田先生はカゴメの方ではないですよね。なぜラブレ菌を食品に生かすことになったんでしょうか。そこには長いプロセスがありそうですね。
杉山
すごい核心を突いてこられましたね、もしかして誰かに入れ知恵された(笑)?
小林
されてません(笑)。
杉山
岸田先生はインターフェロンの大家でした。インターフェロンは人間の体がつくり出す物質ですが、これを外からたくさん与えると人の免疫力が高まるので、ガンを治療したり、C型肝炎のウイルスの活動を抑えたりする働きがあります。先生はご自分のライフワークであるインターフェロンの研究と、お漬物の樽から発見されたラブレ菌を結びつけて、ヒトで実験を行いました。そして、ラブレ菌を食べ続けると、インターフェロンアルファを作る力が増えることを証明されたのです。岸田先生が発見されたラブレ菌は、世界最初で、唯一の乳酸菌と言えます。
小林
ただ便秘に効くというわけではないのですね。
杉山
そうです。先生は、免疫力強化の観点からラブレ菌の研究をされていたわけで、これが便秘に効くなんてことは、カゴメがやるまでお気付きになっていませんでした。もともとラブレ菌は強い菌で、動物性乳酸菌と比べて、腸内生残率は10倍以上。私たちは別名「じゃじゃ馬菌」なんて呼んでいます。生きて腸まで届くぐらいだから、滅多なことじゃ死なない。食品にしたら強すぎちゃって、中で菌が増殖して商品にならないんですよ。
小林
当然味も変わりますよね?
杉山
そうです。「ラブレ」を開発した当初のテスト品は、作って3日もすると酸っぱくなるし、泡は出る、おまけに漬物汁を飲んでいるような味になってものすごい不味かった。これではとても商品にならないと思いました。岸田先生はこうした特性をよく解っていらっしゃったので、食品には使えないと思われていたのでしょう。パストゥール研究所でも、ラブレ菌を粉末にして通信販売する程度でした。そこで岸田先生から、カゴメならラブレ菌を食品にできるのではないかと商品化を許可して頂いたんです。
小林
杉山さんが、岸田先生を知ったきっかけは?
杉山
そもそものきっかけは、2002年の夏に、カゴメに乳酸菌をやっている雪印さんの子会社を買わないかと打診があり、ここを買収して乳酸菌事業に本格的に参入することになったのです。当初は雪印で販売していた商品をそのまま継続してカゴメから販売したのですが、これがちっともうまくいかない。赤字続きでしたが、買収した以上、なんとか軌道に乗せてそれなりにアイデンティティのある事業に育てなきゃいけない。
小林
まさに、プレッシャーと苦悩の時代ですね。
杉山
そうです。だから2004年から2006年の2年間はもの凄く苦しかったですよ。その頃、雪印さんから来た技術者と居酒屋で飲んでいた時にたまたま、ラブレ菌とそれを発見された岸田先生の話を聞き、彼と先生が懇意だったため、会わせてもらえることになりました。
小林
初めて植物性乳酸菌の話を聞いた時はどう思いましたか?
杉山
その頃の私は、さっきの小林さんのように植物性乳酸菌のことを全く知りませんでしたが、彼と話していて、ラブレ菌が植物から発見されたと聞いた時、それが植物性だというところにピンときました。野菜をたくさんやっているカゴメのブランドとすごく親和性があるじゃないかと。それまでやっていた乳酸菌事業というのは、雪印さんから買収したことから、ヨーグルトなどいわゆる動物性乳酸菌のビジネスだったんですね。だからカゴメでは馴染まなかったんです。技術者の彼もラブレ菌を知っていたが、雪印さんでは使い道がなかったと話していました。おまけに、ラブレ菌には、牛乳が嫌いで植物が好きという習性がある。
小林
乳酸菌のくせに(笑)
杉山
そうそう、だから雪印さんの中では育たないわけです。カゴメと雪印さんの子会社が結婚することで、初めてラブレ菌の生きる道が生まれたのですね。
小林
「植物性乳酸菌ラブレ」はラブレ菌のじゃじゃ馬ぶりというマイナスポイントを克服して世に出たわけですね。
杉山
そうです。そのために2年かかりました。とにかくラブレ菌に賞味期限内の16日間だけじっとしとれと、この中に技術をいろいろ詰め込んだんです(笑)。
小林
私はお話を伺うまでは、賞味期限が過ぎると菌が死ぬと思ってましたけど、ラブレ菌は増えるんですね。
杉山
そうです。だから賞味期限が少し切れても効果はありますのでどうぞお飲み下さい。味は少し酸っぱくなっているかもしれないけれど(笑)。「ラブレ」のウルトラマニアはわざと冷蔵庫で4週間おいてから飲むんだそうです。だけどお勧めはしませんよ(笑)。出来るだけ賞味期限内に飲んで下さい。

03月18日

(2) 大ヒット商品「ラブレ」はこうして生まれた。