Show Creator 小林 香の聞かせてください! 雑誌の履歴書

今回のゲストは、建築家の左高啓三さん。左高さんの提唱するこれからの人類、地球を幸せにする哲学、「ルネイズム」とは一体何ぞや。

第8回 ゲスト 建築家 左高啓三

第8回 ゲスト 建築家 左高啓三 1946年8月6日、愛知県生まれ。
1970年、東京芸術大学美術学部建築科卒。1971年、丹下健三・都市・建築設計研究所入所、1973年までシュツットガルト工科大学軽量構造物研究所、客員研究員。1974年、シュツットガルト工科大学軽量構造物研究所入所。1975年、東京芸術大学美術学部建築科、特別講師。1975年、株式会社I・I・E国際環境研究所開設。建設省エコシティ委員、日本建築学会、地球環境行動WG委員、日英高齢者・障害者ケア開発協力機構日本委員会委員。NPO健康未来研究所専務理事。日本クーアシュタット研究会代表幹事。日本エキスティクス学会会員。(株)I・I・E 国際環境研究所長。

3人の先生に師事して

左高
僕は「ドングリ君」という渾名を自分につけているんですよ。深く考えないで思いつくままにコロコロ転がって行くうちに、池の中にポチャンと入ってしまうという感じ。まず最初のコロコロポチャンは大学受験の時。早稲田の建築を受けたかったんですが、国立へ行った方が親に迷惑掛けないかなということで東京芸大を受けることにしました。
小林
ずいぶん殊勝な青年ですね。
左高
ほとんど全員から受かるわけないと言われながら受けたら入っちゃった(笑)。そこで皇居の新宮殿を設計された吉村順三先生に出会いました。先生がおっしゃった「家の設計次第でどんなに仲の良い夫婦も別れさせられる。また、どんなに仲が悪くても仲直りさせられる」。という言葉は今も強烈に残っています。
小林
建物には、そういう力があるんですね。そもそもなぜ建築に興味を持たれるようになったんですか?
左高
小学校6年生の時に親父に言われた言葉がきっかけでしょうか。
小林
お父様はなんとおっしゃったんですか?
左高
フランク永井の歌によせて「私とあなたの合言葉、一級建築士になりましょう」って(笑)。その前は「新聞記者になりなさい」と言われていた。だけど子供ながら、あんな夜討ち朝駆けの仕事は嫌でね(笑)。
小林
お父様も建築関係のお仕事をされていたんですか?
左高
名古屋鉄道の事業マンでした。だから建築とはあまり関係がなかったのですが、子供の中に夢を見ていたのでしょうか。わかりませんが。
小林
卒業後はどこかに就職されたんですか?
左高
アメリカへ行ってペンシルバニア大学を受けようとしたところ、日本の大学はレベルが低いから、2年の実務がないとだめと言われて、諦めました。困ったなと思っていると、ある人から、丹下健三先生の事務所を紹介してもらえることになったんです。それまで学部の卒業生は取らなかったんですが、全国55大学の中から1、2番の卒業制作を集めたコンクールがありまして、それで1番になっちゃったもんだから、こいつは見込みがあるんじゃないかということで、異例とも言える扱いで入れて頂きました。
 入所して1年半くらい経った頃フライオットー先生と丹下先生がクウェートのスポーツコンプレックスの国際コンペティションを協作して親しくなり、新しい建築の開発をすることになりました。「お前は事務所で一番間に合っていないから、ドイツへ行きなさい」と、オットー先生の事務所(シュッットガルト工科大学軽量構造物研究所)に客員研究員として都合4年行きました。これが僕にとってはじめての海外経験(笑)。
 若い時に、3人の分野の違うタイプの先生に師事したわけです。吉村先生からは和の建築、建築を志す者の心のあり方を学びました。丹下先生からは都市や国土の計画を教わりました。先生は焦土と化した日本列島を「再生」される役割を担われた建築家です。エレベーターシャフトや階段室を丸にしたり8角形にしたりした人なんです。どうしてですかと聞いたら、「世界に対して、全方位に発信するんだよ」と言われました。細かいところにまで社会的な意味を持たせて、設計をなさっていました。
 ドイツでの先生、フライオットー氏は今、現存している世界の建築家の中では最高峰の天才です。従来のコンクリートや石に対して、軽量構造の建築様式を創造し世界で最初に実践した人です。

小林
何を使うんですか?
左高
木や、建物に貼り付けるステンレスの薄いものもありますが、一般的にはドームに使われるような繊維ですね。ちなみに、東京ドームのメンブレン膜はガラス繊維で出来ていて、その上にフッ素加工しています。フライパンのテフロン加工と同じですね。
小林
ものすごく軽い?
左高
軽いですよ。エアードーム(空気膜)という形式の2キロや3キロのドーム計画案も以前から多く提案されています。ドイツから帰ってきて10年くらい経って、はっと気が付いたんですが、軽量構造建築物って、今までの建築と比べて、軽いだけでなく格段に省マテリアルな建築なんです。
小林
エコですね。慣れない海外で、随分ご苦労もあったことでしょうね。
左高
苦労というか、めちゃくちゃ楽しみましたよ。もうやり残すことは何もないぐらいの気持ちで帰ってきたら、丹下事務所がお家騒動の渦中で、どうしても外へ出なきゃいけなくなって、先生にご恩をお返しする前に独立することになってしまったのです。