同期に支えられて
- 小林
- 春猿さんって音楽とかは聞かれないんですか? iPodとか持っていらっしゃいますか?
- 春猿
- いいえ、私は機械がだめでビデオ録画も出来ないくらいなんです。
- 小林
- 音楽はあまり聴かないんですか?辛い時悲しいときに自分を励ますために音楽を聴いたりしません?
- 春猿
- そんなことをしたら余計に悲しくなります。
- 小林
- アハハハハ。その頃は何を支えにされていましたか?
- 春猿
- やっぱり国立劇場の同期が助けてくれましたね。有難かったです。同期生だけど年は違います。うちの期は仲がいいんですよ。それは、お互い昔からいい意味でのライバルだったからですね。お芝居を見て「あそここうした方がいいんじゃない? 」って言い合ったりして、向上していける。相手を出し抜いたり、蹴落とすような関係だったら今も仲良くしていないと思います。
- 雑誌ネット
- 同期でも年齢が違うということですが、国立劇場は何歳から何歳まで募集をしているんですか?
- 春猿
- 15歳から23歳までです。
- 雑誌ネット
- 落ちる方も随分たくさんいらっしゃるんでしょうね。
- 春猿
- 入る前も落ちますし、入学してから6ヶ月後に適性審査をやってそこで落ちる人もいるの。最大でも2年で10名しかとらないですからね。国立劇場には、上級生下級生がなくて、2年間びっちりやってそれが終わったら次の生徒を募集して、また2年間びっちりやってという形なんです。
- 小林
- 卒業されるときは何名残っておられたんですか?
- 春猿
- 全員で卒業しましたよ。
- 小林
- 同期にはどなたがいらっしゃるんですか?
- 春猿
- 市川段治郎さんとか同期ですよ。先生方からは「お前達9期は最悪だ」とよく言われていました、授業態度とかもあまりよくなくて。授業中に先生の似顔絵を書いて回したりとか。
- 小林
- アハハハハ、出来てから18年目に入られたと。
- 雑誌ネット
- 伝統芸能の割りに養成所が出来たのは新しいのですね。
- 春猿
- 私の生まれた年に1期生をとったんですよ。
- 雑誌ネット
- それ以前に歌舞伎役者になりたい方はどうしていたんですか?
- 春猿
- 門を叩いて「お弟子さんにして下さい」ですね。
- 小林
- 歌舞伎の家柄の方と、そうでない方の間に壁みたいなものってあるんですか?
- 春猿
- 基本的に役は出来ないからね。でもそれはそういうものだと思って入るから壁だと思ったことはないですよ。
- 小林
- さて雑誌のお話を少し伺いたいのですが、今までどんな雑誌を読んで来られましたか?
- 春猿
- 実を言うと、そもそも雑誌ってそんなに読まないんです。新幹線に乗るときに週刊誌を買うくらいかな?
- 小林
- よく買われる雑誌はありますか?
- 春猿
- 「週刊朝日」とかかな。若い時は「週刊ヤングジャンプ」とかも読んでいました。ニュースは大抵新聞やテレビの報道番組。あとは楽屋でのみんなの会話から仕入れますね。「ふーん、そんなことがあったんだ」って(笑)。
- 雑誌ネット
- 初めて取り上げられた雑誌はなんですか?
- 春猿
- 「演劇界」ですね。
- 雑誌ネット
- それを見た時どう思われましたか? 感慨深かったですか?
- 春猿
- 昔の「演劇界」って1月2月の歌舞伎の配役って全部載ったんですよ。端役だったんだけどそこに小さく春猿って自分の名前が載った時は嬉しかったですよ。一人でにんまりしてたかな。
- 小林
- 初めて写真が載った時は覚えていますか?
- 春猿
- それが全く覚えていないんです。うちはなにしろ師匠が忙しい人だったものだから、とにかく弟子はもっと忙しいわけ。だから、役者になれて嬉しい、写真が載ってようやくここまで来た、という余韻に浸れる時間が全く無かったの。
- 小林
- スーパー歌舞伎とかですよね。
- 春猿
- 大変でした。
- 小林
- お声を聞いていて思ったんですが、下の方から響いてくるような素敵な声ですね。
- 春猿
- とんでもない。
- 雑誌ネット
- 歌舞伎役者になりたくても、声が向いてなくて断念する人もいますよね?
- 春猿
- 私も元々声立ちが悪くて、最初は女形の声なんて全然出なかったですよ。
- 小林
- 女形の方ってみなさんどうやって鍛えられているんですか?
- 春猿
- 昔の役者は踏み切りの横に立って電車が通過する度に、おもいっきり大きな声を出したんだそうです。あまり大きな声出すとご近所迷惑だけど、電車の側なら大丈夫でしょ。
- 小林
- 春猿さんの場合はどういう風にされたんですか?
- 春猿
- 私も家でやる時はタオルを口に当てて、あまりうるさくならないようにしましたね。
- 小林
- その時はどういう声を出すんですか?
- 春猿
- ひたすら高い声でセリフを言いますね。
- 小林
- 女形の方はあんなにハイトーンな音域の中で、感情表現をするのがとても難しそうですね。見ている方はとても楽しいのですが。元々の地声が高い方の方が女形に向いているんでしょうか?
- 春猿
- 高い声だからといって、女形かというとそうでもないですよ。高い声で、「ふあああああ〜(声色で)」と言ってもお客さんには何を言っているか聞こえませんしね、気持ちが表現出来る程度の音域でないと、キンキンキンキンうるさいのよって言われてしまいますね。
- 小林
- なるほど。春猿さんとしては、これからテレビや映画や歌舞伎以外のお芝居でもどんどんご自分を役者として表現していきたいということはありますか?
- 春猿
- 勿論あります。ただ私は歌舞伎役者なので、歌舞伎がベースにあります。そのベースの上で色々挑戦はしたいですね。私が歌舞伎以外で初めて舞台に立ったのは、21歳の時です。平 幹二朗さんと青山の円形劇場で「ヘロデ王」のサロメ役をやらせて頂きました。
- 小林
- 歌が大変お上手と伺ったんですが。
- 春猿
- それも噂ですよ。
- 小林
- ミュージカルに興味は持っていらっしゃらないですか?
- 春猿
- 22歳くらいの時に「霊舞」って和製ミュージカルに出たことはありますよ。ただ私譜面が読めなくて・・・・・・。5歳から12歳まではヴァイオリンをやっていたから昔は読めたんですけど。だからその時も耳で聞いて覚えました。
- 小林
- その後ミュージカルと接点はないんですか?
- 春猿
- ええ。でもミュージカルいいですね。
- 小林
- なんだか新しい企画が生まれそうですね。たとえばロミオとジュリエットだったらどんな役をしたいですか?
- 春猿
- ジュリエットね。
- 小林
- 春猿さんがこの役やってみたいという役はありますか?
- 春猿
- 『サド侯爵夫人』や『黒蜥蜴』なんていいですね。
- 小林
- ぴったりじゃないですか。最後に今後のご活動は。そしてこれからどのような舞台に出たいですか?
- 春猿
- 私達は、スーパー歌舞伎が年間何ヶ月もあって古典をきちんと勉強する時間があまり無かったから、これから古典をきちんと勉強していきたいですね。といいながら来年もスーパー歌舞伎が4ヶ月もあるのでまずは、そこをきちっとこなすことが大事ですねその中で歌舞伎以外の他のお仕事にも力を入れていきたいと思います。やったことがないことにも挑戦したいし、私は何にでもいっちょ噛みしたいタイプなので。
- 小林
- これから是非ミュージカルもご一緒したいですね。
【市川春猿さん出演情報】
スーパー歌舞伎「ヤマトタケル」ロングラン公演決定!
3月新橋演舞場(東京) 4月博多座(福岡) 5月松竹座(大阪) 6月中日劇場(名古屋)
東京:新橋演舞場 3月5日〜25日
チケットホン松竹 03-5565-6000 (AM10:00〜PM6:00)
福岡:博多座 4月3日〜26日
博多座電話予約センター 092-263-5555
大阪:松竹座 5月4日〜27日
06-6214-2211(代)
名古屋:中日劇場 6月9日〜27日
052-263-7171(代)
春猿さんの語る声は、そのお背中をジビジビと振動させるようで、深くまろやかな声色にゾクゾクしました。歌舞伎って歌とダンス(舞)と芝居(伎)という意味だと思いますが、ミュージカルと同じですね。やっぱり人間は歌ったり踊ったりすることがずっと昔から、きっと未来まで、好きなんですよね。ショウも歌舞伎も出し惜しみ無く、これでもか!とお客様を喜ばせたがる芸術。お互いに、こんな仕事をしながら生きていけるのは、すごく幸せだと思いません?

小林香
Show Creator。
京都市出身。18歳で京都フィロムジカ管弦楽団を設立。その功績が認められ、20歳でニューヨーク・フィルにインターン留学。同志社大学卒業後、ミュージカルの演出・振付家に師事。26歳で東宝と最年少プロデューサー契約を交わし、「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」「マリー・アントワネット」「ベガーズ・オペラ」「SHOCK」などの大作に携わる。07年に日比谷に生まれた新劇場・シアタークリエのこけら落とし公演をプロデュース。作詞、ショウの演出・構成においても現在もっとも注目されているクリエイターである。


