養成所時代は
- 小林
- 何年学校に入るんですか?
- 春猿
- 2年ですね、今は3年になりましたけど。
- 小林
- 2年間はどういう生活を送られていたんですか?
- 春猿
- お稽古ですよ。いわゆる学校だから10時半から17時半くらいまであったかな?
- 小林
- 発声とか、三味線とか邦楽の譜面を読むお稽古もされたんでしょうね。
- 春猿
- 授業内容のひとつに「歌舞伎実技」があって、プロの歌舞伎役者さんが来て、実技を中心に教えるの。立ち回り、殺陣などは別にお稽古があるんですね、その中にトンボ(宙返り)のお稽古も入っているしね、そのお稽古の時は日体大の先生が来てトランポリンやマットを使ったりしましたね。
- 小林
- いつ女形をやるか決められたんですか?
- 春猿
- 入学の時からです。
- 小林
- 女形も授業内容は同じ?
- 春猿
- 授業内容は全員同じです。ただ発表会の時に役の振り分けが違うけれど。
- 小林
- 今女形じゃない方も女形のお稽古はされているんですね。
- 春猿
- ええしています。それと長唄とお三味線、それと義太夫の語りのお稽古があって、発音発声は元NHKのアナウンサーの方が来て、それと体操の授業でしょ。
- 小林
- 体操ってくるくる回ったりとか?
- 春猿
- じゃなくて柔軟体操ね。それからお琴と、お茶。あと鳴り物ね、鼓と太鼓。
- 小林
- 『恐れを知らぬ川上音二郎一座』にも女形の役がありまして、浅野和之さんがされているんですが、「女形がいかに体力がいるか、あんたやってみなさいよ〜! 」と別の人にやらせるシーンがあるんですが、立ち方もお腹に力を入れて、腰を落としてと相当大変そうですね。
- 春猿
- やはり立役(男役)の方が、動きは大きいですけれども、女形は静止したままのしんどい体勢で止まっていることが多いですね。だから女形は肉体的にきついんですよ。衣装も立役より重いし、鬘だってそうでしょ。膝は折ってなきゃいけないし、相手役さんが低かったら大変ですよ〜。
- 小林
- それは(相手役より)小さく見せないといけないから? 履き物や鬘も高いですしね。どうやって小さく見せるんですか?
- 春猿
- 着物の中で膝を折ってるんだけど、私も173センチあるから限界があるんですよね。段治郎(市川段治郎)が相手だとすごく助かる。本当は寄り添うように横に立っていなきゃいけない所でも、もう座ったりしますね。座ってもいいんだったらお互いに楽で。
- 小林
- 春猿さんより背の高い女形の方はいらっしゃるんですか?
- 春猿
- うちの笑三郎さん(市川笑三郎)も私より高いし、尾上松也君も私より高くて178センチくらいあるんじゃないかな。
- 小林
- じゃあみなさん大変な思いをされているのですね。
- 春猿
- そうです。あと立役さんにいかに気を使うかが女形の必要なところですね。
- 小林
- どういうところですか?
- 春猿
- 例えば、立役に物を渡す時でも取りやすいところに置くとかですね。同じ役であっても役者によって取りやすい場所が違ったりしますから。
- 小林
- それも聞くまでもなくパッと出せないといけないとか?
- 春猿
- そう。
- 小林
- 国立劇場の学校に入られている時は同級生と遊ぶ時間は有りましたか?
- 春猿
- 普通の学校なら5時半に終わって遊べるけど、歌舞伎の養成学校は日本でここしかないから、地方から来ている人も多くて、そういう人は食べていかなきゃならないから、授業が終わった後アルバイトをしていましたね。奨学金として4万円もらえるけれど、それだけじゃ生活出来ないからね。皆大変でした。私は実家から通いでしたけれども。


