Show Creator 小林 香の聞かせてください! 雑誌の履歴書

第2回 ゲスト 落語家 林家 木久扇

小林
落語がブームですけどれも、今後もっと若いファン層を獲得していこうと思われていますか?
木久翁
特に若い人だけってわけじゃないですね。話を聞いた人が、生きてるとこんなに面白い話に出会えるんだなって思えるような話をしたいですね。例えばおうむの話ね。いたずらな人が、伊勢丹の屋上の園芸店にいるおうむに、行くたびに「三越三越」って教えてたんですって。そしたらそのおうむが、人が集まると「三越三越」って言うようになっちゃって。そのうちいなくなっちゃったんですよ。そういう話を僕は落語だなって思うんですけど。
小林
アハハハハハ。
木久翁
それを元に「おうむ」っていう落語を作ったんですよ。独り者が寂しいけど、友達と住むと仲が険悪になっちゃうからペットを飼おう、人間の言葉に近い言葉を話せるおうむが良いって、飼うんですよ。それで言葉を仕込んで、誰かが尋ねて来たら「誰だ」って聞くんだよって言って出かけちゃうんですよ。その留守にクリーニング屋さんが来て「こんにちは、クリーニング屋でございます」って。そしたらおうむが、「誰だ」、「クリーニング屋でございます」、「誰だ」、「クリーニング屋でございます」、「誰だ」ってずっとやっていて、そのうち口の中酸っぱくなって倒れちゃって、そこに飼い主が帰ってくると、玄関に男の人が倒れてるから「誰だ」っていうとおうむが、「クリーニング屋でございます」って。
小林
アハハハハハ。
木久翁
うちの師匠(彦六)の実話でも面白い話があって。ほら昔の人って雪の日でも雨の日でも高歯の下駄を履いてくでしょ。冬で凍ってるアイスバーンの所へ下駄履いてコート着て出掛けたのね。で、滑って転んじゃったの。僕が引っ張って起こそうとしたら、そういうの嫌いな人だから「いらない」って。また2、3歩歩いたら転んじゃって。しばらくそのままでいるから僕は「師匠どうしたんですか?」って訊いたら「さっき起きなきゃよかった」って(笑)。そういうのがあんですよ。雪の枕だとそういうのをやるんです。
小林
師匠は生き様が落語ですね。
話の最後に「人生たくさん笑ったほうがいいですよ」っていつもおっしゃるんですか?
木久翁
ええ言うんです。あたしの落語が、くだらないんでね、自殺志願の人が2人自殺を止めたそうですよ。同じ年位の人がふざけてばっかりいるのを見て、悩んで死ぬのが嫌になっちゃったんだって。長い手紙をもらいました。
小林
その日のお客さんの層を考えて、話を決められたりするんですか?
木久翁
そうですね。高校生だと落語の中の江戸の風景や口調をいきなり使うと、大げさに言うと外国語聞いてるようなもんでしょ。だから解りやすいお葬式や結婚式、選挙、食べ物、動物の話をするようにしますね。あとね日本医科大の重度のリューマチの患者さんの前で落語をしたことがあってね、落語を聞く前と聞いた後で、インターロイキンっていう悪玉が明らかに減っていたんですって。しばらく痛みがなくなるんです。中高年の方の場合は、そんな話から笑いと健康の話に持っていったりするんです。
小林
お客さんから笑いが返ってくるとどう思われますか?
木久翁
やっぱり掛かったなって思いますよね。してやったりというか。
小林
木久翁さんのお気に入りのセリフを教えて下さい。
木久翁
芸は人柄、だしは鶏がら。
小林
アハハハハハ。それいいな。使わせてもらおう。最後に師匠のドリームとは?
木久翁
アニメを作りたいんですよね。「日本昔ばなし」ってあったでしょ。ああいうのを「日本落語ばなし」で僕の漫画とキャラが動いて、色んな落語家さんをピックアップして色んな役をやってもらいたいんです。自分の絵を動かしてみたいですね。
小林
「ラーメン天狗」に「日本落語ばなし」に、これからますますそちらの活動をされる時間が出来たらいいですね。
木久翁
そうですね。色々な人と会わなくちゃいけないから、時間も掛って結構大変だけどね。でもまだまだ夢がありますから。

林家木久扇さんに

名落語家、名漫画家、名プロデューサーでもあられる木久扇師匠ですが、親子W襲名披露興行では、最後に息子さんと並んでお辞儀された時、用意された座布団を後ろに押しやって地べたの上から深々とお辞儀され、まさに大きな父の姿に見えました。そしてそれを一番後ろでじっと見つめてらしたご令嬢の姿。近頃ドヴォルザークの「新世界」第二楽章〜家路にて〜に、娘の立場から作詞したのですが、父の立場から作詞して木久扇師匠にお贈りしたいと思いました。

小林香
Show Creator。
1977年生まれ。京都市出身。18歳で京都フィロムジカ管弦楽団を設立。その功績が認められ、ニューヨーク・フィルにインターン留学。同志社大学卒業後、ミュージカルの演出・振付家に師事。26歳で東宝株式会社と最年少プロデューサー契約を交わし、「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」「マリー・アントワネット」「ベガーズ・オペラ」などの大作に携わる。07年11月には、東宝新劇場・シアタークリエのこけら落とし公演(作・演出/三谷幸喜)をプロデュース。作詞とショウ演出においても現在もっとも注目されているクリエイターである。

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