-3-   

back<< >>next

【第4回】「製菓製パン」編集長 村田洋治さん
花田
 雑誌の編集後記が好きなのですが、『製菓製パン』の編集後記を読んでいたらいきなり「もみじ饅頭」について書いてあってやっぱりお菓子の雑誌だなと思いました(笑)。

〈厳島神社を訪れた。それぞれに独自の味を謳っている。早速に食べ比べを決行したが、結局、すべてのお店の味を堪能するには至らなかった。〉

 ぼくも甘いものが好きで、和菓子はよく食べます。太らないからケーキよりはいいと言い訳しつつ(笑)。和菓子そのものは時代によって変化はありますか?
村田
 私も入社する前は、和菓子なんかずっと同じ製法で作っているんだろうと思っていましたが、そうじゃないんですよ。やっぱりその時代時代の嗜好を反映しています。お饅頭でも甘味を抑えてみたり大きさを変えてみたりと色々とやっている。
花田
 近年はどのような傾向がありますか?
村田
 やっぱりあんまり甘くない。
金子
 形が小さくなっていますね。あとは最近個別包装されるようになって、お菓子が裸で売られるということがなくなってきました。
花田
 確かにそうですね。2、3日前にコンビニへ行って驚いたんだけど、10円くらいの一口サイズの饅頭が売り出されていました。
金子
 大きさが手ごろなので喜ばれているのでしょうね。
花田
 甘いものを食べたいけれど、大きいのだと太るかなというところではやってるんだと思いますね。
金子
 昔の『製菓製パン』を見ると昔のお菓子は一目瞭然で解ります。
花田
 どういうところが一番違いますか?
金子
 うーん、洋菓子に関しては、ここ何年かでデザインが非常に向上していますよね。和菓子は見た目では、洋菓子ほど大きな変化はありませんが、材料が違ってきています。お砂糖の代わりに最近開発された新素材を使ったり。
 フルーツのペーストっていうのが材料屋さんの方で出来まして、それを用いた色々な物をアレンジするので、ジャムを使うよりも香りや色がよく出るとか、材料がだいぶ変わってきています。
花田
 お菓子のデザインは誰が考えるんですか?
金子
 季節の風物を取り入れたり、外国の雑誌などに新しいお菓子が載ると、それを参考にしてデザインするということはあります。
村田
 最近日本人は非常に優秀で、フランスのコンクールでも大体上位は日本人なんですよね。フランス人が見学に来ても、凄く綺麗で質が良いので驚いて帰る。
花田
 もしお菓子のミシュランがあれば、3つ星が多くなっちゃうんじゃないでしょうか(笑)。
金子
 他の食品においても言えることでしょうが、色使いも変わってきていますね。鮮やかな赤や、黒など昔なら考えられないお菓子が出てきて受けています。
花田
 日本だけじゃなく外国をマーケットにすれば和菓子はまだまだ伸びる可能性はあるんじゃないですかね。クリームなど脂ばっかり使ったものより和菓子の方が健康にはいい。現代人の健康志向にぴったりでしょう。
金子
 ただ先日パリに店を出しているお菓子屋さんに話を伺ったのですが、ヨーロッパではあんこにフルーツの味などを付ければ受け入れられるのですが、あんそのものは味がなくて気持ちが悪いと思われてしまうようですね。日本とはちょっと変えないと売れないそうです。
村田
 豆というのは動物の餌というイメージがあるということです。
金子
 かぼちゃもですが、豆類がヨーロッパの方では下層階級の食べるものというイメージがありまして、あんこが豆で出来ているというだけで低いものと見られてしまうようです。
花田
 和菓子は見た目だって綺麗だし、やりようがあると思うんだけどねぇ。
村田
 お寿司だって昔は生の魚が気持ち悪いと言われていたけれど、今はメジャーになっているし(笑)。
金子
 池に見立てた寒天の中に、煉切の小さな金魚を入れて固めたお菓子がありますよね。あれをフランスのお店で出したところ、リアル過ぎてお菓子とは思えないと驚いていたそうです。日本人にはおなじみのお菓子ですが・・・・・・。
花田
 表参道の交差点の近くに「桃林堂」という和菓子屋さんがあって、季節ごとにお菓子が変わるんですが、かぼちゃの形をした小さな和菓子があるんですよ。
これが、青いところはかぼちゃの皮で作り、黄色いところはかぼちゃの黄色い身で作りと、凝っていて美味しいお菓子でした。かぼちゃのスープもあるわけだからあんなのは外国人に受けるんじゃないかなと思うのですがね。夏はスイカの形のものが出ます。
金子
 でも、もし小豆が世界中で受け入れられるようになったら、小豆を奪い合うことになって、マグロと同じように相場が高騰するかもしれません。
花田
 「赤いダイヤ」の世界ですね。昔、梶山季之さんの小説がありました。雑誌以外にイベントなど主催されたりということはありますか?
村田
 「日本菓業振興会」というお菓子屋さんの研究団体があるのですが、それを後援しています。あと、今年4月に開かれる「全国菓子大博覧会」については特集するなどして読者のお役に立てればと考えています。
花田
 これはどのようなイベントなのですか?
金子
 菓子博は、明治44年(1911)に東京で 「第1回帝国菓子飴大品評会」が開催されて以来、数年毎に日本各地で開催されている菓子業界最大のイベントです。日本中から集まったお菓子が展示、販売され、工芸菓子が披露される。25回目の今年は、兵庫県の姫路市で開催されます。
花田
 そりゃ、ぜひ行ってみたいですね。

 インタビューの初めに、古い『製菓実験』の綴じ込みを見せてくれた。
「昔の読者の方から譲っていただいたものなんです」
 古い雑誌を見るのは大好きだ。陽に焼けた紙、古い活字、レトロなデザイン、広告も時代を感じさせる。パラパラとめくっているとたちまち、創刊の昭和25年に立ち戻ったような気になった。和菓子の技術をひとり占めしないで、若い後継者に伝えたい、創刊した金子倉吉さんの情熱が伝わってくる。
 編集部のあるビルの一階で、もともと和菓子屋さんをやっていたというのも意外だった。
 今も営業していれば、和菓子屋さんの二階で和菓子の雑誌をつくるというのも楽しいだろうなぁ。三時のおやつに和菓子が出たりして。


花田

1942年生まれ。『週刊文春』編集長時代に同誌を日本一の週刊誌に育てる。『マルコポーロ』『UNO!』『編集会議』等の編集長を経て、月刊『WILL』編集長。また、『マスコミの学校』を主宰し、後進の指導にあたっている。

 

-3-

back<<     >>next

> 1-2-3-