
- 花田
- 今、部数はどの位出ているんですか?
- 金子
- 約4万です。
- 花田
- この雑誌には和菓子も洋菓子もパンも入ってますよね。今全国に和菓子屋は何店舗ほどあるんでしょう。
- 村田
- 兼業店もあるので、正確な数字ではありませんが約8万軒あります。
- 花田
- 洋菓子屋さんは?
- 村田
- それもはっきりとは申し上げられません。全菓連、全国菓子工業組合連合会という菓子業界では一番大きい団体なのですが、そこに加盟しているのが約2
- 万6千社だそうです。うちのターゲットは中小のお菓子屋さんです。要するに店主がお菓子を作るし、販売もするという小さいお菓子屋さんですね。大手のメーカーは、自分のところにマーケティングの専門家とか商品開発をやる人がいるんですが、小さいところは余裕がなくてそういうことが出来ません。そういう人たちのために、製法の他に経営問題、ディスプレー方法など店舗についても載せているわけです。
- 金子
- ダイエットフードにお菓子の美味しさを取り入れたいので購読したいという健康食品を開発している方や、大企業でお菓子部門を作るので購読し始めたといろいろな方がいらっしゃいます。お菓子屋さんだけが読む雑誌というわけではなく随分購読者層は広がっています。
全国にお菓子の材料屋さんがあって、そこを支部という形にして、材料を配りがてら毎月配達していただくという形もとっています。 - 花田
- お菓子屋さんは増えているんですか? 減っているんですか?
- 村田
- 減っていますね。地方ではやはり商店街が寂れてきているものですから。段々読者が減ってゆくのではないかと非常に心配しています。
- 花田
- じゃあお菓子の職人さんも減っている?
- 村田
- そうですね。減っています。

- 金子
- 洋菓子のほうは増えているそうです。和菓子は、親がやっている商売を引き継ぐという場合が多いのですが、子供がサラリーマンになったりして後継者がいないということはあると思います。
- 花田
- 和菓子作りのスターみたいな若い人が出てくればいいんですけどね。
- 金子
- そうなんです。それで全国和菓子協会が主催して「選・和菓子職」という認定制度が出来ました。和菓子屋は屋号で出て個人が出ないので、もっと人を出すための、いわばマイスター認定のような制度です。
- 花田
- そうなるともっと和菓子職を志願する若い人も増えてくるかもしれませんね。
- 金子
- 優秀な和菓子職のみが着用できるエンブレム付ユニフォームを作ったりして今後色々活動を広げていくようです。
- 花田
- 村田さんはお菓子屋さんではなかったのに、どうしてこの会社に入られたのですか?
- 村田
- 私は元々、レイアウトや校正など制作の仕事をやっていました。こちらでそういう人間が必要だというので、進行管理とレイアウトの担当として入ったんです。それが段々編集全体にタッチするようになりました。もう35、36年やっています。編集長になって10年。
- 花田
- 今編集部員は何名くらい?
- 村田
- 15名です。
- 花田
- やはり編集部員の方は甘いものが好きでないと勤まらないのでしょうね(笑)。
- 村田
- みんなうちの会社に入ると試食で太りぎみになるんですよ(笑)
- 花田
- 読者の方が一番喜ぶのはどのような企画ですか?
- 村田
- 今はやっている、売れるお菓子の製法ですね。どういうお菓子が売れているのかという傾向などの商品調査も喜ばれます。
- 花田
- スタッフの方が全国のお菓子屋さんを回って取材しているわけですね。
- 村田
- そうです。あとは有名なお菓子屋さんに頼んで試作品を作ってもらったりですね。
- 花田
- でも売れるお菓子の製法なんて教えてもらえるんですか?
- 村田
- 全然知らない人がいっても教えてくれないでしょうが、そこはプロ同士。いろいろ人脈もありますから・・・・・・。
- 花田
- そこが専門誌の強みなんでしょうね。
- 村田
- ある和菓子屋さんに聞いたのですが、春夏秋冬によって作るお菓子は変わってくるんだけど、しばらく作らないでいると、プロでも自分のレパートリーで何を作っていたか忘れることがあるそうなんです。雑誌をめくっていくと「あっ、こういうお菓子があった」と思い出す。そうしたいわばネタ帳としても使ってもらっています。
- 花田
- ここに書いてあるレシピをちゃんと見て作れば素人でも作れますか?
- 金子
- それは難しいと思いますよ。材料もプロ向けですしね。
- 村田
- そこが強みでもあり、弱みなんでしょうね。専門家向けの雑誌なので、こういう時代でも生き延びているわけですが、そこからもう一歩伸びない。伸ばそうと思ってそこから対象を広げるわけにもいかない。要するにうちの雑誌の長所でもあり、欠点でもある。その辺がちょっとジレンマです。
- 花田
- そういうご体験の中で、一番のヒット企画は?

- 村田
- そうですね。一番ヒットしたのは、私が直接タッチしてはいないのですが、入社したての昭和48年頃『新和菓子体系』という和菓子の製法を網羅した上下巻の製法書を発行したのが、うちの空前絶後の大ベストセラーになりました。まだ月給が5万円の頃でしたが、入社したとたん臨時ボーナスが出ましてね。今も2万4千円で販売しています。内容はやや古くなっていますが。
- 花田
- 改訂しながら?
- 村田
- いえ、本当は改訂したいんですが、活版印刷でやったものですから、出来ないんですよ。
- 花田
- しかしこれは、お菓子屋さん必携ですね。いまだったら当然カラーでやるんでしょうね。
- 金子
- ドーナツから、お醤油のお煎餅まで幅広く収録しています。
- 花田
- なんか編集上の大失敗ってありませんか?
- 村田
- 小失敗はしょっちゅうやってますがね(笑)。原稿に「ささがすように」って書いてた人がいるんですよ。
- 花田
- 「ささがす」?
- 村田
- 最初、お菓子屋さんの特殊な用語かと思ってそのまま載せてたんですが、読者のお菓子屋さんから「ささがすとはどういう意味か? 」と問い合わせが入った。「えっ?製菓の専門用語じゃないの? 」と書いた人に問い合わせたら、なんとそれは栃木弁だったんですね。栃木弁で軽く混ぜることをそう言うそうです。
- 花田
- ハハハハ。
- 村田
- あとは、失敗ということでもないのですが、毎年菓子業界の法人申告所得ランキング、いわゆる各社の所得番付をやっていたのですが、法律が改正されて税務署で所得額を公示しなくなったので、うちでもできなくなった。毎年8月号に掲載して、一番売れる企画だったんですよ。
- 花田
- ランキングは何位まで掲載していたのですか?
- 村田
- 所得4千万円で区切って地区別、各都道府県別に分けて掲載していました。時々間違ってそこに載せなかったりすると、「なんで載らないんだ」、また載せたら載せたで「誰の許しを得て載せたんだ」と文句を言われることがありました(笑)。一番反響がある記事でした。
- 金子
- 2005年が最後だったかな。未だに「何月号に変わったんですか? 」と問い合わせを頂きます。
