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【第2回】「月刊むし」編集長 藤田宏さん
花田
 藤田さんが昆虫に興味をお持ちになったのは小学生の頃だと伺いましたが、昆虫の何に惹かれたんですかね。
藤田
 やっぱりカッコイイとか綺麗とかでしょうね。
花田
 好きな昆虫のジャンルはあるんですか?
藤田
 最初はなんでも捕ってたんですけれども、だんだんやってるうちに、クワガタムシとカミキリムシが特に好きになりました。
花田
 私はセミとトンボです。夏になると毎
日、虫取りしてました。カブト虫も好きでしたね。藤田さんはクワガタとカミキリムシのどこに一番惹かれたんですか?
藤田
 クワガタは姿形がカッコイイところ。カミキリムシはひげが長いのがおもしろい。日本に800種類くらいいるんですよ。それを捕りに日本中回りましたけれども、一生やっても終わらないくらい。
花田
 そう言えば都内ではカミキリムシも、あまり見かけなくなりましたね。
藤田
 でも種類数でいうとおそらく東京都が日本一なんですよ。だって東京都って言っても奥多摩から伊豆諸島、小笠原までありますからね。東京都だけで300種類から400種類はいますね。
花田
 蝉もヒグラシやツクツクボウシは都内ではもう殆どいなくなったけれど、ミンミンゼミやアブラゼミは健在ですね。最近クマゼミを東京でも見かけるようになりましたね。
藤田
 たまに声を聞きますね。
花田
 前は生息範囲の北限が静岡くらいまでと言われていたのにどんどん上がってきている。温暖化の影響なんでしょうか。
 それで小学校時代から始まってずっと興味がつながっていったわけですね。いつ頃から虫を仕事にしようと思われたわけですか?
藤田
 家が着物屋だったので一時は着物屋を継ぐものと思って、1年くらい親戚のところで友禅の修行をしていました。
 丁度『月刊むし』という雑誌が、私が高校時代に創刊されました。当時大学生だった先輩4人で創刊した雑誌なんですよ。その先輩達は学生運動のまっ盛りの全共闘の人たちで、その4人が作ったんです。だから0号や1号は全共闘の主張みたいなものがいっぱい出てました。
花田
 でも彼らも虫が好きで雑誌を立ち上げたわけですよね。
藤田
 で、高校生のぼくも『月刊むし』の愛読者で、よく編集部にも出入りしていたんです。そしたら、1978年に前の編集長だった高桑正敏さんという人が神奈川県の公務員になって本当の虫の学者になっちゃったわけです。彼が辞めるときに代わりに編集長をやらないかと言われて、友禅より虫の方がはるかに好きだったから、渡りに船と話に乗りまして、それから来年でもう30年くらいになります。
花田
 その時はまだ学生だったんですか?
藤田
 いえ、友禅の修行中ですね。
花田
 そこから30年ずっとやっておられる。
藤田
 そもそも『月刊むし』というのは、博物学の雑誌なんですね。いわば標本をいじくってああだこうだという本なんです。こうした雑誌は3000部から4000部くらいしか出ないんですよ。薄くて専門的なものですから。それが1986年でしたか、「クワガタ」を特集したらいきなり無茶苦茶出ちゃったわけですよ。増刷してもしても売れちゃって、これは一体何が起こっているんだと思いました。それでその時初めて、標本をいじって楽しむ虫好きだけじゃなくて、生きてる虫が好きな
人は凄くたくさんいるんだということに気付いたわけです。普段は3000から4000部位なんですが、クワガタを特集した号だけ20000部売れちゃったんです。それに目を付けた他の出版社が、「生きている虫の本を作れば売れる!」ということでこぞって活き虫の雑誌を出版したので、一時は活き虫だけを扱った本が8誌も出ました。今はもうその内の4誌くらいになっちゃってますけれども。うちもそのブームを作った元祖なのに何もしないわけにはいかないし、『月刊むし』とは内容がちょっと違うので、特集号だけでは収まらなくなってきたんですよ。で、この『BE・KUWA」という雑誌を作ったわけです。こちらの方が『月刊むし』より分厚いですし、内容やデザインも普通の商業誌に近くなっています。
花田
 『BE・KUWA』の読者層はどういう方が多いんですか?
藤田
 高校生から学者までですね。専門家の方もよく読んで下さっています。
花田
 『BE・KUWA』を開いてみると、「発表第7回 クワガタ飼育ギネス」という特集で、読者が、飼育したクワガタの写真がズラーッと並んでいる。飼育した人のコメントがあり、編集部の寸評がおもしろい。 たとえば
 
坂巻:飼育するのも難しい虫なので☆4
上凾:御蔵島産より神津島産の方が大きくなるんですけど、それを考えても38mmというのはありえない。御蔵島産だったら5とかつけたいんだけど神津島産だったら4かな。
飯島:このサイズには☆4とかつけたいんだけどミクラミヤマ自体の飼育が浅いので全容がまだつかめない。さまざまなことを考えて4かな。
土屋:私の評価は☆5。これはね、野外じゃ絶対採れない。100%ムリだと思う。
 
こんな調子で300匹近いクワガタの写真が寸評つきで掲載されている。他に「82mmオーバーを作った男たち」という座談会やら「美形オオクワガタ・コンテスト 審査員特別座談会 審査員はここを見ている!」「南米ペルーを行く! クラビゲール タテヅノカブト採集記」やらクワガタ一色。 こりゃ作るの大変ですね。
藤田
 海外にも一通り配っています。『月刊むし』には新種の論文の発表が載るんですね、新種は世界共通で、イギリスの大英博物館で作っている台帳に載せられるので、そこへも本を送らないといけないんです。
花田
 英訳して送るわけですか?
藤田
 いいえ、もともと論文は英語で書かれています。命名規約に日本語は好ましくないとありますので。ですから、『月刊むし』は学術誌みたいな商業誌みたいな変なところにいますね。大きな本屋では扱っています。
花田
 たしかに読んでいても非常に専門的ですね。部数はどのくらいですか?
藤田
 3000ちょっとくらいじゃないでしょうか。『クワガタ』の時の異変以外は、40年近くずっとその程度ですね。
<つづく>
 

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