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【第2回】「月刊むし」編集長 藤田宏さん

○皇居は虫の楽園

藤田
 国立博物館の調査で10年位前に皇居へ調査員として入ったんですが、あそこは凄いですよ。色んな虫がまだいました。昭和天皇がむやみにいじっちゃいけない、木が倒れたらそのままにしておくようにとおっしゃって、庭園課の方がいじらないようにして放っておかれたので、虫の宝庫です。
花田
 それはどういう調査なんですか?
藤田
 皇居の生物相をまとめるという調査でした。皇居は東京に残った最後の大きな自然ですから。夜間採集をしてい
ても、皇居は真っ暗なのに、周りが都心でぼんやり明るいので、不思議な感じがしました。「皇太后のおられるところ以外はどこへ行ってどのように調査をしても良い」ということだったので、ピッケルを持って皇居へ入ってボカボカと木を壊して調査しました。
花田
 それはどのくらいの期間?
藤田
 4、5年くらいですね。国立科学博物館が請け負った調査なのでその何人かの方々と今日は行ってみようかという感じで。
花田
 たくさんいましたか?
藤田
 もの凄いものがたくさんいました。
花田
 タマムシなんかもいましたか?
藤田
 タマムシは、東京都心部では1980年代に絶滅したと思いますね。上野の山に1960年代はいて、皇居は80年代までの標本はあります。エノキやサクラなどの食樹はあるので多分排気ガスが原因でいなくなったんじゃないかと思います。陛下も「タマムシはまだいるのか」と言われたので、我々も特に探したんですが。
花田
 天皇陛下ですか?
藤田
 そうです。吹上御所で発電機を焚いて夜間採集とかやっていたらお気になられたようで紀宮様(現:黒田清子さん)と陛下がご一緒に見にこられて、何かが飛んでくる度に「これはなんですか? あれはなんですか?」とお聞きになりました。
花田
 めずらしい虫は見つかりましたか?
藤田
 ええ、ずいぶん見つかりました。蝶々で言うと都心ではそこにしかいない種類がたくさん見つかりました。例えばミズイロオナガシジミやゴマダラチョウなんか飛んでますね。さすがにオオムラサキはいないですね。法務大臣の鳩山邦夫さんは蝶のコレクターとしても有名ですが、クヌギを植えて増やそうとされたようですけれども。昭和天皇が植えられたクヌギが直径30センチくらいの林になってました。
花田
 吹上御所の林は元々ゴルフ練習場だったんですが、昭和天皇がゴルフをなさらず、放っておいたら、草が生え、やがて木が繁ってきた。昭和天皇はその林がお好きで「あまりいじらず、自然のままに」ということでそのまま自然林になったんですよ。ご病気になられてからも気分のいい時にはよく散策なさってたそうです。
藤田
 いまの天皇も娘さんも非常に生き物が好きなようですね。下手なことを言うとばれちゃいそうだなという位、鋭い質問をしてこられました。
花田
 その時見つけた中で、他にも珍しい虫はいますか?
藤田
 トラフカミキリは珍しかったですね、よく都内にこれだけ残っていたなと感心しました。クワガタやカブトムシもたくさんいました。
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花田
 私は、横浜の青葉台に住んでいるんですが、ある朝、会社へ行こうと駅へ歩いていると、コンクリートの歩道に小さなクワガタがいたんですよ。夏だったのでこんなところに、そのまま置いておくと踏まれて可哀相だと思ってカバンに入れた。会社が靖国神社の近くなので、そこで放してやろうと封筒を開けると中で仮死状態になっていました。しばらくすると動き出したので靖国の森に放したんですけれども、あとでクヌギはあるのかなと気になって神社に聞いてみたら1本しかなかった。
藤田
 話から推測するにそれはコクワガタなので、クヌギでなくても大丈夫ですよ。
 

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