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【第1回】「寺門興隆」編集長 矢澤澄道さん

○住職と編集長、二足の草鞋を履いて。

花田
話が少し戻りますが、『月刊住職』をやってらっしゃるときは、お寺の仕事もなさっていたんですか?
矢澤
ええ、やってました(笑)。ちょっと信じられないかも知れませんが、自分としては、とにかく与えられた仕事、『月刊住職』をやりたいというのと、お寺の住職として期待されているというものもありますからね、自分はそんなに思わなくても、来る人たちは寺に用事があってくるわけですよね。
それを疎遠にすることは出来なくて。時間スレスレの生活を送りながらやっていました。今もそうですがね。
花田
編集の仕事というのは、時間が不規則だし、めちゃくちゃ忙しいですよね。
矢澤
そうですね。
花田
『月刊住職』を2人でやってたということですけど、お寺の仕事の調整はどのようにされていたんですか? 急にお葬式ということもありますよね?
矢澤
ありますね。お葬式はいつだって突然ですから。締め切りのある雑誌のことと、そうしたことをこなすのに、もし、スケジュール帳をつけていたら時刻表のように細かくて大変なことになるんでしょうけれど、自分の体で覚えていますので、タイミングをうまく見計らってやっていましたね。24時間体制というんですか、そのような体制でのりきりましたけどね(笑)。
花田
お母様や檀家の方から「もう雑誌の編集なんかやめろ」ということはなかったのですか?
矢澤
ほとんど知らせていないんですね。
花田
えっ、檀家さんにも!?
矢澤
ええ、知らせていないんです。時々テレビなんかに出ちゃうと、「出ていたからびっくりした」なんてことはあるんですけれど、実際に『月刊住職』をやっていたという話は今でもしていないです。総代3人くらいには伝えてありますが。だからほとんどの人が知らないと思いますね。
 

○読者も高齢化で

花田
内容を拝見すると、なかなかジャーナリスティックな雑誌ですね。
矢澤
結構生々しいネタを扱っていて。転ばぬ先の杖ではないですけれども、お寺の役に立つという視点で、物事を実地に取材したり、それを多少なり解説したりというのは他にないですね。こういう感覚は他誌ではなかなか持ち得ないんじゃないですかね。コストもかかりますから、このマーケットの中では、難しいかもわかりませんね。一切スポンサーが付いていませんから。
花田
ではライバル誌というのはないんですか?
矢澤
誰かの評論をのせるというものはポツポツ出てくることはあるんですけれども、紛争現場などに実地に取材するというこの手法のものはないですね。われわれが現場に行って、加害者、被害者あるいは裁判所へ行ったり、警察へ行ったりしてやってるものは。
花田
(目次を見て)「住職の不祥事で被った損害を、宗派が賠償すべきなのか」だなんてね(笑)。
矢澤
大きな問題なんですよ。
花田
「寺から追い出されたと訴える亡き副住職の妻の保障紛争」なんて週刊誌みたい(笑)。非常にこうジャーナリスティックですよね。これは、筆者名を書いていませんけれども、編集部で全部やっているんですか?
矢澤
はい、無署名は全部編集部でやっています。
花田
矢澤さんが今でも直接取材に行かれることがあるんですか?
矢澤
私が取材に行くのは稀になりました。企画を練って、道をつけるとか指導するとかね。あとは、整理がたいへんです。アンカーをするのが。
花田
まさに編集者ですね。出来てきた原稿は全部直されたりするんですか?
矢澤
隅から隅まで、全部やっています(笑)。
花田
好きなんですねえ(笑)。人のことは言えませんが(笑)。今、体制は何人ぐらいですか?
矢澤
編集部は4人ですね。
花田
そうなんですか。それは大変ですね。実は、月刊『WiLL』も4人なんですよ(笑)。
矢澤
大変ですね! じゃぁ酷使されていますね(笑)。
花田
いやいや、私が部員を酷使しているんです(笑)。雑誌が好きなので40年間も、楽しくやっていて、「おれはストレスがないんだ」と言っているんですけれど、部下たちが「その分私たちがストレスを感じているんだ」と(笑)。
矢澤
うちとまったく同じです(笑)。
花田
やはり、雑誌をやっていると楽しいですか?
矢澤
う〜ん……楽しさを味わう時間もなく、次の世界に入っていかなければいけないので。終わりというものがありませんからね。次から次へ、ベルトコンベアーのように情報が流れてくるし、それを時間的にちょっと切ってやるしかないものですから。購読料は事前に頂いているので。
花田
エッ? 予約購買制なんですか?
矢澤
そうなんです。先にもらってます。
花田
それはうらやましい(笑)。今、部数はどれぐらいなんですか?
矢澤
公称1万5千部ですね。お寺が大体7万6千カ寺くらいあるんですね。専任住職がいるのが6万カ寺ぐらい。
花田
大体4分の1ですね。
矢澤
1人で、2カ寺やったり3カ寺やったりしている寺もあるので、まあ、6万寺院のうち4人に1人ぐらいは読んでくれているじゃないかなと。
花田
編集長の目標としてはどのぐらいいけばいいと?
矢澤
まあ、このくらいでいいんじゃないですか。最近の傾向は、高齢化が激しくて、白内障で読めないという人がいるんです。
花田
お坊さんが?
矢澤
高齢のお坊さんの一番のウィークポイントは耳と目ですね。目が見えなくなってしまって、こういう細かい字が読めないというので、購読中止のハガキが結構来ますね。それで、そういう白内障の記事を特集しようと思っても、そういう人は読めないので、あまり意味がないかな(笑)。
花田
しかし、紙が良すぎるんじゃないですか、この雑誌は(笑)。
矢澤
そんなことないですよ(笑)。でも、たしかにみんな「紙がいいな」っていいますね。そういうとこしかホメるところがないのかな(笑)。
花田
今は黒字ですか?
矢澤
はい、黒字です。すれすれですが。
花田
広告があんまり入っていませんね。
矢澤
そうですね、広告はほとんど入っていないんですよね。うちは営業部がいないんですよ。
花田
そうですか。じゃあうちと似てるな。
矢澤
広告は来るのを待っているだけで。
花田
積極的にお願いしたりはしない?
矢澤
あまりしないですね。
花田
それは優雅ですね。
矢澤
優雅というより、広告で何とかまかないたいという気持ちも少しはありますが、いわゆるパブリシティ記事は1ページもありませんから、広告がとりにくい。どうも、広告をもらうというセンスが欠けている。時たま、朝日新聞と読売新聞に広告を出すと、ちょっと興味を持った人が電話をかけてきたりもしますけれどもね。墓園なんかもありますが、そういう業者と付き合うと、何かあった時に宣伝してほしいとか言われたりすることもありますから。まあ、来るものだけを受けたいということですね。
 

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