fumimaru51のシヌマデシネマ
【最終回】
ロシア史上 最も愛される人形童話
『チェブラーシカ』

僕は今から11年前の1997年に川崎市の家族と離れ大阪に単身赴任して以来、2000年に東京に戻った際にもその単身社宅を三田に移し、現在にいたっている。つまり、平日は一人で暮らし、週末川崎の家に帰るという生活をあしかけ8年続けている。いわゆる週末婚。知りあいの男性陣からは羨望のまなざしで見られている。
然して、その実態やいかに。映画のように素敵な女性(ひと)と出会い、恋に落ちるわけもなく、わけもなく(!)、 友人や同僚との飲み会や取引先との会食がある晩は、別にして帰りに地元コンビニのCOREに寄りビールや弁当惣菜を買い、半地下のワンルームマンションで飲し食す。ほとんどがそういう日常の繰り返し。今日がいつの今日かもわからなくなる孤独な埋没の日々を過ごしている。
四月は一人ぼっちで過ごすには淋しすぎる季節だった。四月にはまわりの人々はみんな幸せそうに見えた。人々はコートを脱ぎ捨て、明るい日だまりの中でおしゃべりをしたり、キャッチボールをしたり、恋をしたりしていた。でも僕は完全な一人ぼっちだった。直子も緑も永沢さんも、誰もがみんな僕の立っている場所から離れていってしまった。そして今の僕には「おはよう」とか「こんにちは」を言う相手さえいないのだ。
(村上春樹著『ノルウェイの森』より)
先月米国に行った。以前ならともかく、かくもインターネットが発達し、何でも事足りる世の中になっても、ロサンゼルスのウェストフィールドショッピングセンターにも、ラスベガスのファッションショーモールにも、いまだに多くのひとたちがまさに人種のるつぼのごとく集まっている。アフリカのヌーやジゼル同様、人は群れなければ生きていけない動物なのだとつくづく思う。決してネパールの雲豹やベンガル虎にはなれない(猫科の大型肉食獣はライオンを除きそのほとんどが『孤高の人』なのだ)。
この夏、ジブリ美術館が贈るロシアの人形童話映画『チェブラーシカ』。日本では2001年に公開され大ヒットを記録した。
動物園で『ワニ』として働く、孤独なワニのゲーナが、ともだち募集の張り紙を書くところから始まる。「わたしは50才のわかいワニです。ともだちがほしいと思っています」。
かくしてゲーナは不思議ないきもの『チェブラーシカ』と出会い、同行を始める。そして最後に高らかにこう唄う。
「♪ゆっくり時が ただよっていく 過ぎたことは 取り戻せない 過去はちょっと 惜しいけれど 未来はもっと 素敵だよ 道は はるか彼方にまっすぐと 地平線へと向かう だれだっていいことあると信じている 走るよ 走る 水色の汽車」
(作詞 エドゥアルド・ウスペンスキー 訳詞 児島宏子 作曲 ウラジミール・シャインスキー
『青い列車』)

僕がこの映画に深く感銘するのは、キャラクター造型や登場人物や動物たちのユニークな動きや表情の妙もさることながら、このゲーナの心の吐露にある。それは生きとし生けるものすべてに普遍共通の心の叫びなのだから。
今回の映画:『チェブラーシカ』
【STORY】
オレンジの木箱に閉じ込められて、遠い南の国からやってきた、大きな耳の小さないきもの。起こしてもすぐに倒れてしまうので「チェブラーシカ(ばったりたおれ屋さん)」と名づけられたこの正体不明のいきものは、動物園にも受け入れを拒否され、都会の片隅の電話ボックスで暮らしていた。そんな彼が出会ったのは、動物園で働く、一人暮らしの孤独なワニ・ゲーナだった。「この街には一体どれくらいいるんだろう。ひとりぼっちの人が。」ふたりの優しさが今、この街に、ささやかな幸せを生み出してゆく――。
映画『チェブラーシカ』全四話完全版が2008年7月19日(土)から渋谷シネマ・アンジェリカなどでロードショー
http://www.ghibli-museum.jp/cheb/

11回に渡ってお送りしてきた「fumimaru51のシヌマデシネマ」
ですが、今回で最終回を迎えることになりました。
読者の皆様ありがとうございました。

本名 山崎文雄。52才。会社員。2001年スタジオジブリ鈴木敏夫氏に出会い、『千と千尋の神隠し』でコンビニでの映画タイアップを実現。その後2006年森田芳光監督作品『間宮兄弟』に出演し、2007年には同監督の『サウスバウンド』『椿三十郎』及び犬童一心監督の『グーグーだって猫である』(2008年公開予定)にエキストラ出演。またリュック・ベッソン監督作品『アーサーとミニモイの不思議な国』では声優にも挑戦。
http://ameblo.jp/fumimaru51/
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