チクチャ・チョングのMY LITTLE NEWS SHOW

チクチャ・チョング
Jikja Chung


東京生まれ。在日コリアン3世。東京調布市のアメリカンスクールを卒業し、ハーバード大学に進学。ハーバード大学卒業後、民放テレビ局のニューヨーク支局及び東京で衛星放送会社勤務を経て、コロンビア大学ロースクールを卒業。その後、ニューヨークにて大手法律事務所の金融部に勤務。’06年、夫の仕事の関係でカリフォルニア州、オレンジ・カウンティー、ニューポート・ビーチに移住。現在、世界に16のオフィスを持つ弁護士事務所のコーポーレート部に所属し、主にM&Aや不動産系ジョイントベンチャー等のプロジェクトに携わる。その他、地域の非利益団体に団体設立やガバナンス等の法律的アドバイスを無償で提供する活動も行っている。ニューヨーク州及びカリフォルニア州弁護士の資格を持つ。

第五回 WE ♥ 日本車

 世界最大手の米ゼネラル・モーターズ(GM)の2008年1月から3月の販売台数をトヨタ自動車が上回ったというニュースが目に止まりました。このペースで行くとトヨタは2008年度末にはGMを抜き、世界一になるそうです。ニュースを見た数日後の朝、いつもの様に車で事務所に向かっていたら、私のとなりを屋根にアメリカ国旗を掲げ、車体に国旗や米軍の支援ステッカーを貼った、愛国心丸出しのトラックが走っていました。運転席にいたのは長いひげを生やして、ちょっとラフな感じのサングラスをかけた中年の白人男性。私の予想していた「帰還兵タイプ」のプロフィールにピッタリ当てはまっていました。トラックはもちろんGMかフォードだな、と思ったら、なんとトヨタ社製! 以前は、こういうタイプのトラックはアメリカ車が当たり前だったのですが・・・・・・。

 思い起こせば80年代日米貿易摩擦によって、大規模な反日キャンペーンが方々で開催され、「ジャパン・バッシング」などの言葉もよく耳にしました。アメリカ人がハンマーで日本車を叩き潰している光景がテレビに映し出されていたのを、未だに鮮明に覚えています。その当時、もし前述のニュースと同じ様な事が起こっていたら、アメリカのメディアは大々的に市民に危機感を煽っていたのではないでしょうか。しかし、今回のニュースに対してアメリカ人からネガティブな反響はまったくといってもいいほどありませんでした。

 周りのアメリカ人にも色々聞いてみたところ、アメリカ車を持っている人、又は買いたいと思った人はほとんどいませんでした。日本車は信頼性と中古市場での価値が高いだけではなく、燃費が良いというイメージがあるそうです。ガソリン価格が高騰している今、納得の答えでした。

 私が車の運転を習い始めたのはOCに引っ越すことが決まったわずか3年前(東京・ボストン・ニューヨークでは車は必要なかったというのが言い訳ですが・・・・・・)です。以前はアメリカ社会で車が持っている意味があまりピンと来ませんでした。しかし、車なしでは生活出来ないOCに引っ越してからというもの、アメリカ人の友達の話を聞いていると、車が彼らにとって毎日の生活に欠かせない存在であるばかりでなく、彼らは車に対して深い感情を持っていることを認識しました。アメリカでは全世帯の約92パーセントが車を所有し、一人一日平均約40マイル(約64キロ)車で移動します。さらに米ABCテレビの調査によると約4割の人が自分の車を「好き」(LIKE)ではなく「愛している」(LOVE)そうです。自分の車に名前をつけている人も何人か思い当たります。そしてアメリカ人の7割以上が車を運転していると、「独立心を感じる」そうです。とてもアメリカ人らしい答えですよね。

 この様に「車」という思い入れの強い商品に対してもアメリカ人が迷わず日本車を選んでいる現状を見ると、20年前の出来事がウソのようです。良い物だったら、どの国から来ても受け入れるというスタンスは、実力があれば誰でも受け入れるアメリカ社会を象徴していると思います。