チクチャ・チョング
Jikja Chung
東京生まれ。在日コリアン3世。東京調布市のアメリカンスクールを卒業し、ハーバード大学に進学。ハーバード大学卒業後、民放テレビ局のニューヨーク支局及び東京で衛星放送会社勤務を経て、コロンビア大学ロースクールを卒業。その後、ニューヨークにて大手法律事務所の金融部に勤務。’06年、夫の仕事の関係でカリフォルニア州、オレンジ・カウンティー、ニューポート・ビーチに移住。現在、世界に16のオフィスを持つ弁護士事務所のコーポーレート部に所属し、主にM&Aや不動産系ジョイントベンチャー等のプロジェクトに携わる。その他、地域の非利益団体に団体設立やガバナンス等の法律的アドバイスを無償で提供する活動も行っている。ニューヨーク州及びカリフォルニア州弁護士の資格を持つ。
第十三回 アメリカでの雇用にご用心
毎年夏になると、うちの事務所を含め、各大手の弁護士事務所にはロースクールの学生たちがサマーアソシエイツ<SUMMER ASSOCIATE>(SA) として働きに来ます。学生の姿をみると、「私も昔はこんなに初々しかったのねー」と自分のSA時代を思い出します。卒業後はほとんどの学生が、SAを経験した事務所に就職するので、その書類審査・面接は実質就職活動に等しいのです。そのため、学生は2年生の初めは将来の職場となる受け入れ先を探すのに必死です。日本の感覚からいうと青田買いですが、実際に就職する前に、学生・事務所側がお互いを知ることが出来るのがメリットではないでしょうか。
新卒の50%以上が3年以内に辞めてしまう大手事務所側は、優秀な人材の確保に余念がありません。事務所の中でもトップレベルの弁護士が、一次面接時から忙しい時間を割いて、ロースクールへ出向いたり、このプログラムのために何人かの弁護士で構成された雇用委員会を設けたりなど、SAプログラムを重要視しています。
私も事務所の雇用委員になったので、様々な履歴書を読んだり面接を行う機会が多いのですが、日本の就職活動では普通に行われていても、アメリカの雇用均等法のガイドラインでは禁止されていることが多々あります。
例えば、日本では履歴書に写真を添付するのが当然ですが、アメリカでは絶対にありません。企業側が応募者を見た目(人種・性別・年齢)を理由に、書類審査で落とすのを防ぐためです(履歴書に書いてある名前や学校を卒業した年で人種や年齢がわかってしまう場合が多いのですが)。もちろん、履歴書に年齢と性別を書く必要もありません。面接時も「聞いてはいけない質問リスト」があります。その質問をいくつか挙げると、結婚しているか、子供はいるか、どの宗教に入っているか、犯罪歴はあるか(しかし、企業側はその候補者の身辺調査をすることが出来ます)、障害者であるか、など。もしこのガイドラインに違反していると、アメリカ雇用機会均等法の番人として知られている、政府機関、連邦雇用機会均等委員会(U.S. EQUAL EMPLOYMENT OPPOR-TUNITY COMMISSION “EEOC” ) の目に留まり、企業側は訴えられることとなり、罰金を科せられたり、企業イメージの低下につながってしまいます。EEOCはアメリカ全土で活発に活動しており、決して軽視は出来ません。私がロースクール1年生の夏に、連邦裁判所でインターンをしていた時、何件ものEEOCと企業側の和解会議に出席したのを覚えています。これらのガイドラインは、アメリカでは法律で厳密に定められており、アメリカの企業は日系企業を含めて忠実に守らないといけないのです。
